理学療法士の初任給は過去10年間でほとんど変わっていないことが分かりました。それに対し、社会保険料率は右肩上がりのため、手取り収入は低下傾向だと考えられます。
この記事で分かること
✔️ 理学療法士の初任給は過去10年間「22万円〜24万円」の間を推移
✔️ 令和3年度の理学療法士の初任給は平均23万200円
✔️ 令和3年度の新人理学療法士のボーナスは平均4万7600円
✔️ 実質の手取りは低下傾向(天引きされる金額が上昇傾向)
✔️ 日本の大卒1年目の初任給の平均より高い水準にある
理学療法士の初任給は約23万円|令和3年〜平成23年の推移
平均すると理学療法士等の初任給は約23万円で推移しているのが分かります。多少の変動はあっても22万円以下にはならず、24万円以上にもならないので、ほとんど変わっていないと言えますね。
ちなみに、令和3年度の理学療法士の平均初任給は「23万200円」とされています。
データは「政府統計の総合窓口 e-Stat」から全て収集しています。理学療法士等の経験年数0における「所定内給与額:残業などの時間外労働を除いた給与」から算出しています。
令和元年の大卒1年目の平均初任給は
- 男性:21万2800円
- 女性:20万6900円
とされていますから、理学療法士は日本において平均以上の初任給をもらえます。
※理学療法士の年収は20代前半のみ高い傾向にあります。詳しくは↓で
新人理学療法士のボーナスは10万円以下|令和3年〜平成23年の推移
1年目の理学療法士のボーナスの平均は上記のグラフの通り10万円以下なので、給与1ヶ月分以下という計算になります。
令和3年度の新人理学療法士の平均ボーナスは「4万7600円」とされています。
一般的に新人の夏のボーナスについては、ボーナスの査定の期間(前年度の冬〜今年度の春)には入社していないので、支払われないケースが多いと思います。ただし、寸志程度で少額を支給するところはあるでしょう。
しかし、冬のボーナスについては一般的にボーナスの査定の期間が「今年度の春〜秋」になるので、給与1ヶ月分程度の支給の数字を超えてきてもおかしく無いと思っていたのですが、データから見ると社会人1年目のボーナスはほぼ期待できないと考えたほうが良いかもしれませんね。
ボーナスは必ず支給しなければならない決まりは無いので、勤め先によってはそもそもボーナス制度が無い病院や企業もあります。なので、データにバラつきが生じるのは仕方ありません。
ボーナスについては、理学療法士全体の給与の傾向を見るより、勤め先のルールを確認する方が良いでしょう。
手取り収入は低下傾向にある|社会保険料率は上がり続けている
初任給と言うと、4月分の給料のことをイメージするかと思います。実は、4月分の給料にはあまり控除されないケースが多いのです。いわゆる「給料からの天引き」が4月分の給与を貰う時には額が少ないということですね。その理由は、一般的に4月分の保険料は5月に払うルールになっている所が多いからだとされています。
なので、上記の社会保険料率が関わってくるのは5月の給与からというケースが多いでしょう。
理学療法士の初任給は約23万円で変わりませんが「給料からの天引き」の金額は右肩上がりなので、新卒の手取り収入は年々低下し続けているということです(これは理学療法士に限った問題ではありませんが)。
社会保険料は年々、右肩上がりに上昇し続け、令和元年には30.3%という数字を記録しており、過去最高の負担率です。
実際、社会保険料は勤め先が半分負担してくれるので、30.3%の半分が給与から控除「給与の15.15%天引き」されます。ちなみに、平成15年だったら11.33%の天引きで済んでいたのです…泣
そして、社会人2年目からは住民税(一律で所得の10%)も引かれるので気に留めておきましょう。
住民税が引かれない分、社会人1年目の方が社会人2年目と比較して手取り収入が多いことになりますので(ボーナスを考えないケースでは)、もしローンなどを組む予定があるのなら注意してくださいね。
まとめ
- 理学療法士の初任給は過去10年間「22万円〜24万円」の間を推移
- 令和3年度の理学療法士の初任給は平均23万200円
- 令和3年度の新人理学療法士のボーナスは平均4万7600円
- 実質の手取りは低下傾向(天引きされる金額が上昇傾向)
- 日本の大卒1年目の初任給の平均より高い水準にある
という結論になりました!
実際、理学療法士の初任給は高めなので良いデータとも捉えられるでしょう。長い目で見ると問題になるのは昇給率の方です。
※詳しくは↓の記事参照
ただ「過去10年間の初任給」と「社会保険料率の経過」をさかのぼって見てみると、給料が変わらないと言う現状は結果として徐々に手取り収入を少なくし、暮らしが苦しくなる傾向にあることが分かってきました。
これは理学療法士などのコメディカルに限った話ではありません。給与から天引きされる金額が高くなっているのはサラリーマンという働き方をしている方々においては同じです。
日本において、人口構造的に増税傾向にならざるを得ないことは多少理解できますが、各個人の生活を考える上で、本記事で紹介したデータを元に「どのように自分の身を振るか?」を考えていく必要があるでしょう。
理学療法士としてのポジションを築くキャリアを描くのか?今の勤務先でキャリア形成するべきか?転職をしながらキャリアを形成するか?はたまた理学療法士以外の仕事を目指すか?副業で収入源を増やす方法を取るか?
人生にはさまざまな選択肢がありますから、事実・データを元に自分自身のポジションを考えていきましょう。
※賃金構造基本統計調査のデータ集計が令和元年度から変わり、本記事の「初任給」と「ボーナス」のグラフは令和元年度から男女合算の数字となっているため、グラフが重なる結果になっています。
※賃金構造基本統計調査の集計方法により、平成のデータは「理学療法士と作業療法士の合算」令和のデータは「理学療法士と作業療法士と言語聴覚士と視能訓練士の合算」となっています。
※参照:e-Stat 政府統計の総合窓口
※参照:日本年金機構 国民保険料の変遷