理学療法士は岸田総理の注目政策の1つである「介護、保育、幼児教育、看護の賃上げ」の対象に含まれるのか?
結論から言うと、理学療法士を含む作業療法士などのコメディカルの給料が上がる可能性はあります。しかし、それには条件がいくつかあるので、全ての理学療法士が賃上げ政策の恩恵を受けれる訳ではありません。
本記事は理学療法士の給料upの可能性に着目して情報を整理しましたので、是非チェックしてみてください。
理学療法士の給料は上がる?|A.介護保険業界とコロナ対応病院の職員はupする可能性あり
岸田内閣の注目政策の1つである「看護師・介護士・保育士」の賃金向上、令和4年の2月から実施されることになりました。理学療法士というワードは含まれていませんが、実は理学療法士も給料引き上げの対象に含まれるケースがあるのでしっかり確認しときましょう。
賃上げ政策の対象|理学療法士が含まれる領域
「賃上げ対象」と「賃上げの金額」を正確に示すと以下のようになります。
職種 | 賃上げ金額 |
---|---|
看護師(コロナ医療など担う医療機関勤務) +看護補助者、理学療法士、作業療法士などのコメディカル | 月額4000円 |
福祉・介護職員 +その他の職員 | 月額9000円 |
保育士・幼稚園教諭 | 月額9000円 |
つまり、理学療法士が賃上げされる可能性があるのは
- コロナ医療などを担う医療機関と認められた場所で働く理学療法士
- 介護保険領域で働く理学療法士
のどちらかということになります。
もしかしたら「あれ、対象に入っているはずなのに給料が上がってない。」「給料上がったけど、9000円に届かないんだけど?」と思う方もいるかもしれません。その理由ついては以下に解説します。
給料の引き上げが無い理由|賃上げ額が9000円に満たない理由
理由は、以下の2つが考えられます。
- 勤務先の事業所が賃上げ補助金の支給を希望(申請)していない
- 勤務先の事業所の判断によって理学療法士を賃上げ対象にしていない
賃上げ政策の恩恵を理学療法士が受けるには「勤務先の事業所が賃上げの計画を立てて申請する」「勤務先の事業所が理学療法士を賃上げの対象にする」という2つのハードルがあるということです。
さらに、2つのハードルをクリアしても9000円の賃上げは基本的に望めません。なぜなら、賃上げの補助金の支給額は「福祉・介護職員の常勤換算分」「看護職員の常勤換算分」だからです。理学療法士などの「その他の職員」に分類される方々の分は支給されないため、「その他の職員」まで分配するには9000円を下回る額にして支給するのが一般的でしょう(事業所が賃上げのために補助金+αを出すというのなら話は別ですが…)。
参考:福祉・介護職員処遇改善時特例交付金 看護職員等処遇改善事業補助金
賃上げ政策は令和4年9月まで?|A.10月以降も賃上げを維持すると岸田総理は明言している
令和4年度の2月から行われた賃上げは「補正予算」によって賄われており、9月まで補助するとされています。この情報から「賃上げは一時的なものではないか?」という疑問が生まれる方が少なくないでしょう。
しかし、岸田総理は「恒久的(ずっと変わらず)に給料を引き上げる」と公言しているため、10月以降も引き上げられた給料分は維持される可能性が高そうです。以下に岸田総理の記者会見内容を引用します。
分配政策の重要な柱の一つは、企業による賃上げです。あらゆる手段を講じて企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成することが重要です。そのためにも、国が率先して公的価格の引上げを行います。介護、保育、幼児教育などの現場で働く方の給与を来年2月から恒久的に3パーセント引き上げます。看護は、来年2月から1パーセント、10月から恒久的に3パーセント引き上げます。加えて、中小企業が賃上げをした場合に、その分を適切に価格転嫁できるよう、私から産業界に広く協力を要請するとともに、そのための施策パッケージを12月27日に取りまとめます。来年1月から3月を集中取組期間とし、政府を挙げて取り組みます。
引用元:令和3年12月21日岸田内閣総理大臣記者会見
会見の内容から「看護師(理学療法士・作業療法士等のコメディカル含む)に対する賃上げ」の金額は令和4年10月から上昇する可能性がありそうですね。
令和4年9月までは、看護師の賃上げ対象が「コロナ医療など担う医療機関勤務」と限定されていますが、令和4年10月以降は対象を拡大するかどうかについては、令和4年度の予算編成課程で検討されるようです。
理学療法士が給料を上げるための転職のポイント|賃上げ政策の恩恵を受けるには
転職サイトで賃上げ政策の補助金の支給の可能性があるかチェックしましょう。チェックするためには賃上げ政策の正式名称を覚える必要があるので以下に記載します。
賃上げ対象 | 政策の名称 | 賃上げ金額 |
---|---|---|
看護師(コロナ医療など担う医療機関勤務) +コメディカル | 看護職員等処遇改善事業補助金 | 4000円 |
福祉・介護職員 +その他の職員 | 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金 | 9000円 |
転職サイトには正式名称ではなく、ほとんどの場合で「処遇改善」というワードで書かれており「給与の備考」などの給与の補助的な項目で書かれていることが多いです。
実際に転職サイトで調べてみたところ、介護保険領域の事業所では処遇改善の支給を明確にしているところは割と多いですが、病院系ではなかなか見つけることができませんでした。
ひとことに処遇改善といっても、今回の記事で説明した政策による賃上げによる処遇改善が成されるかどうかは確実ではありません。しかし、理学療法士への処遇改善手当の支給が明確にされている事業所であれば、今回の賃上げ政策の恩恵を受けられる可能性が高いことは間違いないでしょう。
追記:令和4年10月以降の賃上げ政策について
看護職員処遇改善評価料を新設
令和4年の2〜9月の看護職員等処遇改善事業補助金は、補正予算によって賄われていましたが、令和4年の10月以降は「診療報酬」でお金が賄われることになります。
つまり、患者の支払う医療費の金額を引き上げ、それを財源にして看護職員等(理学療法士を対象に含む)の給料を増額することになります。
処遇改善については以下のように内容をまとめられます。
- 対象医療機関に対し「看護職員(常勤換算)1人につき一定の賃上げ(2月からは4000円、10月からは1万2000円)が可能な財源」(つまり「当該病院の看護師数(常勤換算)×1万2000円または4000円」)を渡す(補助金、診療報酬)
- 各医療機関で、交付された財源を原資として「スタッフ(医療機関の判断で一定程度柔軟に拡大してよい)の処遇改善(賃上げ)」を行う
上記の2つのリストは、GemMedの10月からの看護職員処遇改善、「看護師数×1万2000円」財源を診療報酬でどう配分すべきか―入院外来医療分科会の記事より引用しています。
ちなみに「医療機関の判断で一定程度柔軟に拡大してよい」という判断基準の中に理学療法士が含まれるのか?という点については、令和3年の12月に厚生労働大臣が「令和4年10月以降は診療報酬で同様の処遇改善を行う方針」を決定しているため、看護職員等処遇改善事業補助金と同様に理学療法士も対象に含まれると考えて良いでしょう。
看護職員等処遇改善事業補助金と同様に引き上げと謳ってはいますが、4000円の引き上げではなく、1万2000円程度引き上げる診療報酬上の対応がされるとのことなので、以前より3倍の賃上げ政策になります。
理学療法士への処遇改善手当の支給がされるかどうかについては事業所・病院の判断に委ねられますが、理学療法士も対象に入っていることから、給料が増額する可能性はあります。
介護職等ベースアップ加算を新設
令和4年の2〜9月の福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は、看護職員等処遇改善事業補助金と同様に補正予算によって賄われていましたが、令和4年の10月以降は「介護報酬」でお金が賄われることになります。
看護職員処遇改善評価料と同様に、利用者の支払う介護費の金額を引き上げ、それを財源にして介護職員等(理学療法士を対象に含む)の給料を増額することになります。
介護職等ベースアップ加算の対象となるのは、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定している事業所になるため、訪問看護、訪問リハビリは対象外になってしまう点には注意が必要でしょう。
賃上げ額は9000円とされており、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金と同額の給料増額が期待されます。
賃上げの対象は、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金と同様に「事業所の判断により、その他の職員の処遇改善に充てることができる」とされているため、理学療法士も対象になる可能性があります。
まとめ
理学療法士が岸田総理の賃上げ政策によって給料が上がるケースは以下の2つが考えられます。
- コロナ医療などを担う医療機関と認められた場所で働く理学療法士:0円〜1万2000円以下
- 介護保険領域で働く理学療法士:0円〜9000円以下
今回紹介した「賃上げ政策」の恩恵が受けられる可能性のある事業所を探す場合には「処遇改善」というワードをチェックしましょう。
たとえ、月額6000円の給料上昇があったと仮定しても、年収で計算すれば7万2000円ですから、決して少ない額ではありません。また、今回の賃上げは恒久的(ずっと変わらず)に行うと岸田総理は明言しているため、情報を良くチェックして行動をすることおすすめします。