財務省がリハビリ専門職の賃上げ措置を決定した!
財務省は、2024年度診療報酬改定では「本体」部分の改定率+ 0.88%とし、そのうち0.61%を看護職員、リハビリ専⾨職などの医療関係職種の賃上げ措置に充てることを決定した。
財務省ホームページの社会保障関係予算に示された資料(下記)の中で、医療従事者の賃上げにリハビリ専門職と具体的に明確されたことは、特に注目される。
引用:https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1550
これは、理学療法士にとってとても喜ばしいニュースです!
ではでは、具体的にどうやって賃上げが成される(可能性がある)のか?以下で詳しく解説するのでご参考ください。
そもそも賃上げ措置とは?
日本政府が言及する「賃上げ措置」とは、企業が従業員の給与を引き上げるために講じる措置のことを指します。
これは、経済成長を促進し、消費を活性化させるために、政府が企業に対して行う呼びかけや政策的支援の一環です。
具体的な措置としては、税制優遇や補助金の提供、中小企業への支援強化などがあります。また、政府は経済界に対して賃上げの重要性を強調し、年次経済政策指針などを通じて目標賃上げ率を示唆することもあります。
ということで「措置の内容」についてはさまざま考えられるため、重要なのは「どんな措置が行われるのか?」ですよね。
措置の方法はどんな内容が考えられるのかについて、以下で解説します。
日本政府による具体的な賃上げ措置の方法について
日本政府による賃上げを促進するための「具体的な措置」には、以下のようなものがあります。これらの措置は、企業に対して経済的なインセンティブを提供し、従業員の給与を上げる動機付けをすることを目的としています。
税制優遇措置
政府は、賃上げを行った企業に対して税制上の優遇措置を提供することがあります。これには、法人税の軽減や、特定の給与増加分に対する控除等が含まれます。このような税制優遇は、企業の賃上げを経済的に支援することで、より多くの企業が賃上げを実施するよう促します。
もし、措置の方法が「税制優遇措置」だった場合、勤め先の管理者の判断によって賃上げされるかどうかが左右されますね。
その税制優遇措置を受けたほうが法人や会社の利益になると判断した場合には、職員の賃上げを行い、税制優遇措置を受けるでしょう。
しかし、事業所が税制優遇措置を受けずにそのまま運営を続けるケースも考えられるため、その場合は職員の賃上げをするメリットは無くなり、賃金アップは望めません。
補助金の提供
特に中小企業や小規模事業者を対象に、賃上げを行うための補助金が提供されることがあります。賃上げによる経営負担を軽減し、企業が安定した経営を続けながら従業員の待遇改善を行うことを支援します。
重要なのは「補助金がどこに提供されるか?」ですよね…。
介護士への処遇改善加算のように、職員への直接的な補助金投入だったら最高です。会社の判断に左右されず(会社が補助金を受けるかどうかの判断はありますが…)に、決まった処遇改善の補助金が職員の手に入ります。
しかし、ガソリン補助金のように会社に補助金を投入する場合は、勤め先の事業所の判断次第で手に入る金額は動いてしまうでしょう。(「補助金の〜%までは賃上げに使うこと」、のように制限が設けられる可能性はあります)
人材育成支援
賃上げだけでなく、従業員のスキルアップやキャリアアップを通じて、企業の生産性向上を図るための支援もあります。政府や関連機関からの研修プログラムの提供や、資格取得支援などがこれに該当します。従業員の能力向上は、給与アップにも直結し、企業の競争力強化にもつながります。
これは、望ましくない支援です…。人材育成支援が措置の方法として選ばれた場合は、賃上げされる可能性は低いと思って良いのではないでしょうか。
すでに、理学療法士協会など、専門職団体が自発的に積極的な人材育成支援を行っているため、さらなる政府の育成支援で何か変化を起こせるのかと想像すると…。
おそらく厳しいでしょう。人材育成をしてもリハビリ診療報酬にあまり関係しなさそうですから(今回数字が動いたのはインフレなどの社会情勢が要因)、数字を動かす力にならなそうです。
(個人的にスキルアップして管理者コースに乗れる可能性があるとかは、また別の話)
財務省は「物価に負けない賃上げを」と
ちなみに、今回、数字が動いたのはインフレなどの社会情勢が要因です。
財務省は「物価に負けない賃上げ」を目指して診療報酬をプラスに動かしました。
引用:https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024/seifuan2024/01.pdf
介護士の処遇改善についても同様に、社会情勢を背景に行われたことです。つまり、賃上げに関して人材育成(質の向上)の要素などは影響されにくい傾向にあるとみて良いでしょう。
令和6年度ベア2.5%、令和7年度ベア2.0%とは?
「令和6年度ベア2.5%、令和7年度ベア2.0%」という表現は、看護師やリハビリ職(理学療法士、作業療法士などのリハビリテーション専門職)の基本給(ベースアップ、略してベア)が、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%増加することを意味しています。
ここでいう「ベア」は、業績や個人の成績に左右されず、従業員全員の基本給を一律に上げる賃金上昇のことを指します。これは、定期昇給や業績に応じた賞与(ボーナス)とは異なり、企業や組織が従業員の基本給を恒常的に引き上げることを示します。
ということで、ベアの値が書かれていることから「ベア=基本給アップ」が望めるということになるでしょう!(ベアされても賞与が下げられて年収が変わらないとかだと意味がありませんが…)
財務省の社会保障関係予算資料にこのような記載がある場合、それは政府がこれらの職種の賃金改善に向けた具体的な計画を立てていることを意味し、その実施に向けた財源の確保や政策推進の姿勢を示していると言えます。
明記したということは、財務省も賃上げに前向きではあるということですね。これは明るい要素です!
ベアとインフレ率の関係
現状の日本のインフレ率と賃金上昇の動向を見ると、賃金の上昇が物価の上昇に追いついているかどうかが注目されています。2024年についての予測では、デフレからの脱却と2%程度のインフレが実現するかが焦点となっており、実質賃金は年後半に向けて前年比でプラスに転換する見込みであることが示されています 。
一方で、賃金上昇については、特に大手企業での賃上げの動きが注目されています。円安の恩恵を受ける輸出企業や価格上昇が売上増につながる小売企業などが業績を上げる中で、基本給の引き上げを求める動きが広がっています。一部の大手企業では7%程度の賃上げの方向性を打ち出す動きもあり、賃上げが経済全体にポジティブな影響を与える可能性が示唆されています 。
しかしながら、中小企業では賃上げが進んでいくかが課題となっており、人手不足の中で賃金を上げるための措置が必要とされています。経済産業省は、省力化投資を行う必要性を指摘しており、小規模企業でも生産性や収益力を高めることで賃金を引き上げる余裕を生み出す政策を推進しています 。
これらの情報を総合すると、インフレ率と賃金上昇のバランスは現在のところ、賃金の上昇がインフレ率を追い越す可能性があるという前向きな予測が立てられていますが、その実現には中小企業の賃上げの進展や省力化投資の普及など、さらなる取り組みが求められています。
と前向きな予想は立てられていますが、現状日本は21ヶ月連続の実質賃金マイナスです。つまり、物価は高くなっているのに対して、給料はそんなに上がってない状況。
物価が上がることをインフレと言います。給料は上がらないのにインフレが続けば、どんどん生活は苦しくなる。
生活が楽になるためには、インフレを上回る給料アップが重要なのですが…。
さてさて、どうなるでしょう。以下で詳しく解説します。
参考:https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20231204_024123.html
ベアとCPIはどっちが高くなるのか?
2023年12月の時点で、日本の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.6%上昇しました。生鮮食品を除くと2.3%、生鮮食品とエネルギーを除くと3.7%の上昇でした [oai_citation:1,統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)](https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)。詳細な情報は[こちら]
2023年12月の日本の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で2.6%上昇したというのは、一般的に物価が前年の同じ月に比べて2.6%高くなったことを意味します。CPIは、家庭が購入する一連の商品やサービスの価格変動を測る指標で、物価の変動を示す重要な指標とされています。物価が上昇するということは、消費者が同じ量の商品やサービスを購入するためにより多くのお金を支払わなければならなくなったことを示します。
「生鮮食品を除くと2.3%」というのは、生鮮食品(例えば、果物や野菜、魚などの価格が日々大きく変動するもの)の価格変動を除外した場合の物価上昇率が2.3%であったことを意味します。生鮮食品を除外する理由は、これらの商品の価格が天候や季節によって大きく変動しやすいため、物価の基本的なトレンドをより正確に把握するためです。
また、「生鮮食品とエネルギーを除くと3.7%の上昇」というのは、生鮮食品だけでなく、エネルギー(電気、ガス、石油製品など)の価格変動も除外した場合の物価上昇率が3.7%であったことを示しています。エネルギー価格も国際市場の影響を受けやすく、価格が大きく変動するため、これらを除いた数値は、物価の変動の中でより根本的なインフレ傾向を理解するために参照されます。
これらの数値は、物価の上昇が消費者の購買力にどのような影響を与えるか、また、政策立案者が経済にどのように対応すべきかを判断する際の重要な指標となります。特に、生鮮食品とエネルギーを除いた3.7%の上昇は、物価の根本的な上昇圧力が比較的強いことを示唆しているかもしれません。
つまり、見るべきは「生鮮食品とエネルギーを除くと3.7%の上昇」ですね。これが最も根本的なインフレを理解するための値です。
2023年12月時点で判断すると…もし、2024年(令和6年)も同じインフレ率が維持されるとどうなるか…?
年収がベア2.5%上がっても、消費支出は3.7%くらい増えるので…生活はあまり楽にならなさそうですね。消費支出が給料に対して大きく抑えられている家庭であれば大丈夫ですが。
わずかながら貯金できる家庭の場合、給料のほとんどを消費するわけですから、インフレ率3.7%が多大なダメージになるのです。
ということで、家庭によってインフレのダメージは異なりますが、貯金があまりできない家庭にとってはベア2.5%があってもCPI3.7%が家計へ与えるダメージは大きそうです。
今後の日本のCPI予想について
日本の消費者物価指数(CPI)の今後の予想については、経済状況、政府の政策、世界経済の動向、エネルギー価格の変動、食品価格の変化など、多くの要因に左右されます。2023年に見られた物価上昇の傾向が続くか、または物価の安定化が進むかについては、以下のポイントが考慮されます。
インフレ率の目標
日本銀行は、安定的な物価の目標として2%のインフレ率を掲げています。中央銀行の金融政策や経済刺激策が、この目標達成にどれだけ貢献するかがキーとなります。
エネルギー価格
国際的なエネルギー価格の動向、特に原油価格は、日本の物価に大きな影響を与えます。日本はエネルギーを大量に輸入しているため、価格の上昇は物価を押し上げる要因となります。
円の価値
円の為替レートも重要です。円安は輸入品の価格を押し上げ、物価上昇の一因となる可能性があります。
引用:https://g.co/finance/USD-JPY(令和6年2月11日時点)
h4.経済活動の回復
COVID-19パンデミックからの経済回復の度合いや、その他のグローバルな経済活動の動向も、物価に影響を及ぼします。
h4.供給網の問題
世界的な供給網の問題や、特定の商品に対する需要と供給の不均衡は、特定のカテゴリの物価を動かすことがあります。
h4.国内外の政策
政府や日本銀行の政策、特に財政政策や金融政策、その他の経済刺激策は、消費者の購買力や物価に直接影響を与えます。
h3.日本のCPIが上がる要因はたくさんある…
インフレ率目標2%については、すでに達成しているにもかかわらずデフレ脱却を謳っているようですから、謎です。インフレ放置を正当化したいのかも?
エネルギー価格については、実は石油価格は2024年はそんなに高くならなそうです。
2024年の石油価格については、いくつかの要因により変動が予想されています。米国エネルギー情報局(EIA)によると、2024年と2025年の平均石油価格は2023年の平均とほぼ同じ水準に留まると予測されています。これは、今後2年間で石油液体の世界的な供給と需要が比較的バランスを保つと見込まれるためです。具体的には、ブレント原油の価格は2024年にバレル当たり平均82ドル、2025年には79ドルと予測されています。2024年第1四半期には、OPEC+による生産カットが世界的な在庫減少を引き起こし、価格の上昇が見込まれていますが、4月以降は生産の増加が消費を上回るため、徐々に価格が下がると予測されています
参考:https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=61222
ただし!その他のエネルギー価格は上がりそうです…泣
石油以外のエネルギー価格の最近の推移と予想は、主に天然ガスと再生可能エネルギーに関連しています。天然ガス価格は、欧州のロシア依存度の低下と、脱炭素化への世界的な移行の影響を受けています。日本では、天然ガスの輸入価格が2020年1月比で約2倍に上昇し、電気料金も高騰しています。この高騰は、欧州のLNG需要の増加と、ガス田への投資減少による供給不足が背景にあります。2025年頃まで天然ガスが世界的に供給不足状態になると予想されています
再生可能エネルギーの普及は、グリーントランスフォーメーション(GX)の一環として進められており、日本政府は2030年までの電源構成において再エネの割合を3638%にする目標を掲げています。しかし、この目標達成は現状から見ると困難とされ、2050年までには5060%への増加を目指していますが、火力発電への依存は依然として残る見通しです
参考: 〖2024年~2025年〗の電気料金値上げの見通しと企業の対応策 | 企業省エネ・CO2削減の教科書。
2023年のエネルギー需給実績によれば、日本の一次エネルギー国内供給は前年度比2.3%減少し、化石燃料は1.9%減少した一方で、再生可能エネルギーは10年連続で増加しています。電力消費は企業・事業所他で4.5%減、家庭で5.0%増となっており、非化石発電比率は27.3%となっています 。
LNG市場では、現在の価格レベルが一時期に比べて安定しているものの、小さなトラブルでも大きな影響を与えかねない状況が続いています。2028年以降は、スポットLNG価格の高騰が多くのLNG液化プロジェクトを誘発し、過去最大の供給過剰が発生するとの懸念があります。欧州は、ロシアガスの依存度を減らすとともに、脱炭素化の推進とエネルギー安全保障の向上において将来的に重要な役割を果たすと見られています 。
さらに、2024年の現状、基本的に日銀は円安政策をとっています。
円安になると、円の価値がドルなど他の通貨と比較して安くなってしまい、モノを輸入するときの値段が上がってしまうのです。
海外へ輸出する企業は外貨が手に入るので儲かるようですが…。庶民に輸出企業はあまり関係ありませんね。ただ単に、輸入しているモノの物価があがり、家計に影響を与えます。
また、経済活動の回復については以下のデータをご参照ください。
日本国内での消費は、現状、どんどん弱っています。
そして、国内外の政策については、分かりやすい部分としては金融政策ですね。
日本の金利はとても低く抑えられており、金融緩和を継続中。ということで、円をばらまく方針です。アメリカは、まだ日本と比較して高金利です。
日本とアメリカの金利差に関しては、2024年における予測に基づいて、いくつかの重要な動向が見られます。日本銀行(BOJ)は、2024年にマイナス金利政策を終了する見通しであると、経済学者の多数が予測しています。これは、日本の短期預金金利が過去7年間マイナス0.1%に設定されていたことを変更しようとするものです。また、BOJは2024年末までに10年物国債の利回り管理制度も廃止する可能性が高いとされています 。
一方、アメリカにおいては、2024年に金利を約100ベーシスポイント(bps)(100ベーシスポイント=1%)引き下げると予測されています。この予測は、インフレ率が引き続き低下するという見方に基づいており、政策金利を制限的な水準から中立的な水準へと移行させることを目指しています 。
つまり、経済成長を過度に抑制せず、かつインフレを適切にコントロールするための措置として金利引き下げが予測されているということです。
これらの情報を踏まえると、日本は2024年にマイナス金利政策を終了し、金利を引き上げる方向に動く一方で、アメリカは金利を引き下げる動きが予測されています。これにより、日本とアメリカの金利差は、2024年に向けて縮小する可能性があります。ただし、両国の金融政策の方向性や経済状況によっては、この予測は変動する可能性があるため、最新の市場分析や金融政策の発表に注目することが重要です。
ちなみに2023年12月の時点で、アメリカの基準金利、すなわち連邦資金供給金利(Fed Funds Rate)は5.50%でした
参考:(https://tradingeconomics.com/united-states/interest-rate)。
以上のことから、リハビリ専門職のベアがあったとしても、社会情勢的には「日本の物価が下がりそう」な傾向はあまり見られず(未来は誰にも予測できないけれど)、油断はできない…。
つまり、必ずしも家計が楽になるとは言えない社会的要素が多いので、注意が必要です。
h2.財務省の賃上げ措置決定は良いニュースだが…
インフレ率などの予想から、決してリハビリ職の家計の見通しは明るいとは言えませんが…。
財務省が、リハビリ専門職に対してのベアの数字を示したことは、とても明るいニュースです!今までにない傾向ですね🤔
いろいろ言ってきましたが、ともかく…
「自分の給料は上がりますか?」ということが誰にとっても最も重要。つまりは、勤め先がどんな動きを見せるかを注視するしかないですね。
財務省のベア方針に逆らって、リハビリ職の賃上げがされない職場だと…インフレ率のみが家計に襲いかかり、生活は苦しくなる一方でしょう。
日本政府はリハビリの賃上げ措置をどんな形にするのか?そして、勤め先はどんな判断をするのか?
社会情勢のデータをふまえて注目せざるをえません!