「理学療法士 将来性」で検索すると「理学療法士の将来性はある!」とか「理学療法士はオワコン!将来性はない!」とか、言い切ってしまっている意見をよく見かけます。
はっきり言って、将来という不確定なものにおいて、そんな単純に言い切れる話題ではありません。言い切るからには、その背景に何らかの意図があると思っても良いでしょう。
ただし、専門職の歴史や日本政府から報告されている情報などを見て、ある程度の予測は立てられます。
本記事では、情報を集めて多角的な視点で理学療法士の将来性について予測を立ててみましたので、良かったら見ていってください。
- 理学療法士個人のポテンシャルは高く将来性がある
- 理学療法士という職種の将来性は高いと言えない
- 理学療法士は供給過多になる予測されているが需要は無くならない
- 他職種と比較した理学療法士の給料の推移
- 理学療法士の生き残り戦略はある
理学療法士の将来性を「ある」「ない」で単純に語るな
人によって将来についての考え方は異なりますし、そもそも将来性という言葉の捉え方にも幅があります。
さらに、職種というマクロの視点で語るのか?個人というミクロの視点で語るか?によっても異なります。
将来性の捉え方
そもそも、将来性とは何を指すのでしょうか?言葉の意味としては「将来に発展・成功しそうであろうという見込み」とされています。
何をもって成功と捉えるかは、個人の感覚によってかなり変わるかと思います。
再度書きますが、理学療法士の将来性について調べてみると単純に「理学療法士の将来性はある」と書かれている文章が多いですが、そんなに簡単に言い切れるものではありません。
それぞれの人生の価値観によって将来性に関わる要素は異なります。
以下に「いわゆる成功者」の示した成功の定義を例に挙げてみます。
- トーマス・エジソン:「仕事中毒であること」
- オバマ元大統領:「人々の生活を変えること」
- ビル・ゲイツ:「社会に影響を与えること」
- アリアナ・ハフィントン:「お金と権力だけではない」
- マーク・キューバン:「成功にお金は必要ない」
などなど、上記の成功者のコメントを5人挙げてみても、成功の定義はそれぞれ異なることが分かります。また「成功はお金じゃない」と語る方も多いですね。
これらの名言をまとめると、考え方によっては将来を見据えなくてもすでに成功している理学療法士の方もいるでしょう。
たとえば「仕事中毒であり、人々の生活を変えること」を成功と捉えるなら、成功している理学療法士がいるはずです。もしくは、これから成功できそうな方もたくさんいるでしょう。
しかし「いやそういうことじゃない。もっと豊かに生活できるような未来が待っているのか知りたい。」という方も多いのではないでしょうか。
一方、お金に関して以下のような名言を残した方々もいます。
- 村上龍:「お金で幸福を買うことはできないが、不幸を避けることはできる」
- 堀江貴文:「お金は信用である」
- クレア・ブース・ルース:「お金はあなたが不幸な間、何不自由ない生活をさせてくれる」
成功に関する名言と、お金に関する名言をまとめると
- 成功や幸せはお金だけでは成り立たない
- お金だけでは幸せになれないが、不幸から逃れられる
ということが言えるのではないでしょうか。
令和の時代に入り、社会情勢の不安定さが増し、急激な物価の高騰や円安、止まらない増税を目の前にして、日本の先行きを不安に思う方はきっと少なくないはずです。
「成功を掴みたい!」というより「なるべく穏やかに過ごして不幸を避けたい」と思う方が多くなるのも頷けます。それほど、未来に対する閉塞感に溢れている社会情勢ですから。
「不幸を避ける」ことを目的とするならば、その人にとっての成功はお金によって得られる可能性もあるのです。
そう考えてみると、単純に「理学療法士の将来性はある」とは言い切れないでしょう。
個人の人生の価値観によって将来性は異なってきます。
さらに、個人の視点のみでなく、職種全体の将来性についても考える必要があるでしょう。
2つの視点を持つと、なおさら将来性を単純に「ある」「ない」と言い切ることは難しくなります。
以下に「理学療法士個人の将来性」「理学療法士という職種の将来性」の2つに分けて考察して見ました。
ミクロの視点|理学療法士個人の将来性ポテンシャルは高い
理学療法士各個人の将来性について考えてみると将来性は決して低くなく、むしろ高いのではないかと思われます。
その理由は、非常に勉強熱心な方が多いため、個人の能力の発展が見込めるからです。
突然ですが、日本で働く社会人の1日あたりの平均勉強時間をご存じでしょうか?
総務省統計局が発表している平成28年社会生活基本調査によると、日本で働く社会人の平均勉強時間は6分とされています。さらに、95%が勉強していないと回答しているのです。
予想ですが、理学療法士の1日あたりの勉強時間についてアンケートを取れば、間違いなく勉強時間は6分以上、かつ95%が「勉強していない」と回答することは無いでしょう。
理学療法士は、社会人として働き始めた時から「症例検討」や「学会発表」「勉強会」などなど、勉強時間が確保されやすい環境にいる方が多いはずです。
成功者の言葉で紹介したような「仕事に熱中できる」環境に身を置きやすいと考えられます。
さらに、年収の高い人ほど勉強していることがビジネスマン向け雑誌プレジデントの調査結果で分かっています。
つまり、理学療法士は多くの日本で働く社会人より勉強時間を確保しており、仕事に熱中しやすく、年収も高くなりやすいポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
マクロの視点|理学療法士という職種の将来性は高くない
理学療法士を取り巻く環境は決して明るい状況だとは言えません。「理学療法士の将来性はない」と言われる原因は主に以下の2つです。
- 理学療法士は供給過多になる予測がされている
- 理学療法士の給与水準が低めで推移している
まず「理学療法士は供給過多になる予測がされている」という内容について以下に説明します。
理学療法士・作業療法士需給分科会で「PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった」と以下のように発表がされています。
次に「理学療法士の給与水準が低めで推移している」という内容について以下に説明します。
多数ある医療職の中で特異的に理学療法士の給料は上がっていません。給料面での将来性に不安のあるデータが財務省より公開されています。
理学療法士と作業療法士においては、その他の医療職の給与水準が上昇トレンドにある中、取り残されています。
上記のデータは日本政府から発表されているものであり、理学療法士が将来を考える上での不安要素に大きく関わっていることは間違いないでしょう。
しかし、これらの不安要素に対して「高齢化社会だからこそ、理学療法士の需要はあり、将来性は十分にある」や「需要が増加する職業ランキングで理学療法士が1位に選出されている」などの反論を述べる方もいます。
上記の反論は決して間違っていません。しかし、医療や介護保険分野で働くことを考える以上、日本政府の方針にとても影響されることを忘れてはいけません。
疾患別リハビリテーション点数を決めているのは内閣や厚生労働大臣です。
たとえば厚生労働省から「廃用症候群リハビリテーションの単位を下げます!」と発表されたなら、医療保険分野で働く以上はそれに従うしかないのです。
つまり、厚生労働省や分科会の発表を無視して理学療法士の将来性を考えることはできません。
理学療法士・作業療法士需給分科会は「さまざまな幅を想定して理学療法士と作業療法士の需要と供給を推計している」と発表しており、分科会の議事録を確認しても供給過多になるという報告をくつがえすような議論はなされていませんでした。
理学療法士と作業療法士は供給過多になるという状況への対策の方向性として、理学療法士・作業療法士需給分科会から「将来の需給バランスを見据えると、学校養成施設に対する養成の質の評価、適切な指導等を行うこと等により、計画的な人員養成を行うことが必要ではないか。 」という案が出されています。
すぐにリハ職の現役世代に影響の出る方向性が出された訳ではありませんが、供給過多へ対策する方法案については今後の発表を注視していく必要があるでしょう。
他の反論意見として「理学療法士は新人が大勢増えているから年収が上がらないという数字が出ているのだ」という内容もよく聞かれますが、看護師数の増加を参考に見てみましょう。
看護師数も右肩上がりにある中、理学療法士とは違う給料トレンドを描いています。ちなみに、看護師の平均年齢は明らかにされていませんが、40代前半あたりに収まるとされています。理学療法士の平均年齢とそこまで大きく変わらないですよね。
以上のように、理学療法士という職種を考えた時に将来性が高いと言えるような情報が報告されていません。それが将来の不安要素になっていると考えられるでしょう。
理学療法士はやりがいのある仕事|需要は無くならない
「理学療法士の将来性はある」と言われる背景には、主に以下の3つの理由が挙げられます。
- 高齢化社会は続く
- 需要は無くならない
- やりがいのある仕事
上記の3つの理由は正しく、理学療法士にとって良いことではあります。日本は超高齢化社会が今後も続くことが予想されており、高齢者の割合は増え続けます。その中で理学療法の需要が無くなることはないでしょう。
さらに、いわゆる成功者の言葉に挙げられている「仕事中毒」や「人々の生活を変えること」に関して、理学療法士は非常に達成しやすい傾向にあるでしょう。
理学療法士は直接的に患者と関わり、共に人生を考えていくことのできる仕事です。患者の人生に変化をもたらす可能性を十分に秘めており、仕事に対して充足感を得やすいです。
また、理学療法という学術には広さ・深さがあり、学会などの活動も非常に活発です。仕事中毒になれる魅力を持っています。
そう考えると、やりがいのある仕事であることに間違いはありません。現役理学療法士も、考え方によっては既に成功者と呼べる方々も大勢いそうです。
理学療法士は、仕事への充足感は高くなりやすく、人生において多くの時間を占める仕事の時間を有意義に使うことができるでしょう。
理学療法士の需要は無くならないが発展性には疑問が残る
以上の情報から理学療法士の将来性・発展性についてまとめてみましょう。
理学療法士の仕事は非常にやりがいがあり、成功者の法則に当てはまるほど熱中できる魅力がありながら、給料の伸びは期待しにくく、将来性には不安が残る状況に置かれていると言えるのではないでしょうか。
しかし、将来性には不安が残りつつも日本の人口構造からして需要が無くなるとは考えにくく、医療・介護・介護予防分野などで今後も必要とされるでしょう。
つまり、今後も理学療法士の需要はあり続け、仕事の裾野は広く確保されるが、職種としての発展性については疑問が残るような状況だと予測します。
以下に細かく解説してみます。
職種の専門性を高めるのは難しい|専門職化の限界点
理学療法士として仕事をしていれば、おそらく誰しもが聞いたことのある話。「理学療法士として日々仕事の質を高めて社会に貢献すれば、世の中に認められるようになり、より理学療法士にとって良い環境になる。」というような内容。
とても理想的な話であり、願わくばそのように理学療法士の地位が上がることが望ましいと思います。
上記の「理学療法士なら誰しもが聞いたことのある話」いわゆる「従来の専門職論」に由来する考え方だとされます。
しかし、今の時代では従来の専門職論は、ほぼ通用しなくなっていると考えて良いでしょう。
つまり、理学療法士の専門職化をこれ以上進めるのは困難な時代になっているということです。
現代のケアの職種(医療・保健・福祉の分野)の専門職化が進み、多くの資格と専門職が乱立する世の中になりました。たとえば、以下のような職種があります。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 精神保健福祉士
- 臨床心理士
- 介護支援専門員
- etc・・・
他にも医療・保健・福祉分野の専門職をピックアップすれば、さらに多くの専門職が隣り合って乱立しています。
上記のように専門職を並べてみると、どのようなことを感じるでしょうか?
おそらく「それぞれの専門領域の違いが分かりにくい」と感じるかと思います。そこが専門職化における重大な問題点なのです。
専門領域の違いが分かりにくいということは、それぞれの職種の専門性が確立しにくい状況になっているということです。
いくら職種の専門性を高めても、隣り合った専門職があることによってその差異を明らかにしにくく、専門職化を進めることが困難になっているのです。
「それでは、従来の専門職論はどうやって確立されてきたのか?医師や看護師などは専門職化に成功しているが、どうやって成功したのか?」という疑問が生まれるかと思います。
医師や看護師の専門職化を語るにあたって「理学療法士として日々仕事の質を高めて社会に貢献すれば、世の中に認められるようになり、より理学療法士にとって良い環境になる。」という一般的な専門職化の考え方の側面とは違う部分に目を向ける必要があります。
その違う部分とは何か?それは「非専門領域を規定して切り離す」という考え方です。
つまり「この仕事は私たちの専門領域じゃないから行わない」ということを明確にし、それを非専門領域と決めて、他の職種に受け渡す過程です。
医師や看護師は、一般的な専門職化の考え方に加えて「非専門領域を規定して切り離す」ことにも注力して専門職化に成功しました。
具体的には以下のように非専門領域を受け渡してきました。
- 医師⇨看護師:患者の身体的側面の治療以外を看護師に受け渡す
- 看護師⇨看護補助者:専門領域を規定し、それ以外を看護補助者へ受け渡す
看護師においては、患者個々の生活を重視する専門性の側面があり、看護補助者との線引きが難しい部分があるとされますが、看護補助者という受け渡す相手がいることで、専門領域と非専門領域を作ることができる状況にあると言えるでしょう。
医師や看護師の、他の職種へ非専門領域を受け渡すことによる専門性向上の過程を見つめると、その重要さが分かるかと思います。
さて、これから理学療法士は医師や看護師のように専門職化に成功することができるでしょうか?
従来の専門職論を活用して専門性の向上を目指すのは、どのケアの専門職も同じです。お互いに専門領域がかぶっており、他と職種と差別化して特権を得るのは困難でしょう。
それでは、医師や看護師のように非専門領域を受け渡す職種を作り出すという方法はどうでしょうか?
おそらく難しいでしょう。理学療法士を含め、リハ専門職は「供給過多」になると分科会から発表されており、わざわざ非専門領域を作り出して受け渡すどころか、同じリハ専門職内で仕事の取り合いになる可能性すらあります。
これは理学療法士のみの問題ではありません。
現代に乱立するさまざまなケアの専門職の専門性向上には非常な困難が伴うということが言えます。
現代はケアの専門職が乱立し、従来の専門職論によって専門性を高めることが非常に困難になっているのため、理学療法士が専門職化に成功した医師や看護師のような業務独占を持つ特権的な地位を確立できる可能性は低くなっているのです。
仕事の裾野は広い|幅広い分野で働ける可能性
理学療法士が仕事できる領域は幅広く、今後も裾野は広がっていく可能性があります。
現状、一般的には病院や診療所などの医療業界に勤めることが多いとされていますが、以下のような業界でも働けます。
- 介護保険分野
- 介護予防分野
- スポーツ分野
- ヘルスケア産業
- 医療機器メーカー
その中でも理学療法士に期待されているのは介護予防分野やヘルスケア産業での活用です。これについては理学療法士・作業療法士需給分科会の議事録でも「拡大しそうな領域」として話題に挙がっていました(予防の領域という話題でした)。
ヘルスケア産業については、医療・介護保険の分野から離れた領域であり、理学療法士という資格が優位に働くとは限らない領域です。無資格者でも健康ビジネスで成功している方は多数います。よって「今後、理学療法士がどんどん参入する分野だ」とは言い難いと予想します。
一方、介護予防分野については理学療法士の参入拡大が期待できます。介護保険分野に仕事の裾野をすでに拡大している理学療法士であれば、優位性を保ったまま参入することができるでしょう。介護保険や総合事業などに関する見識を持った理学療法士が仕事をする領域を拡げていくことは十分に考えられます。
しかし、介護予防事業で働くことを考えると大きな問題点があります。
介護予防事業の問題は、低報酬であることです。
介護予防事業においては、介護保険の中の要支援サービスや介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)といったものが中心になりますが、2017年から開始された総合事業の背景には介護費用の抑制という目的があります。
「総合事業の単位は自由度が高く、市町村が設定するのだから一概に下がるとは言えないのでは?」という意見もありそうですが、資格要件の緩和などが影響して介護報酬が下がりやすいのです。介護報酬の低下により、大手の介護事業者が撤退した例もあります。
そもそも、厚生労働省老健局振興課の発表している「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」において、総合事業の中心にある考え方は「互助:費用負担が制度的に保障されていないボランティアなどの支援、地域住民の取り組み」とされています。
つまり、要介護認定(ここでは要介護1〜5の方とする)をされた介護保険サービスの中心にある「公助:介護保険・医療保険(税金)部分」とは違い、税金などの金銭が投入されにくい分野が総合事業だと言えます。
介護報酬が低く、運営の難しい環境の中で働くとしたら、どうしても給料面では苦しい環境に陥りやすいでしょう。
理学療法士の職域拡大領域として期待されている介護予防事業において、仕事の裾野が拡がる可能性が十分にあります。しかし、事業運営や収益面で厳しい分野だと言えます。
給料の伸びは期待しにくい|人口と社会保障制度の厳しい状況
「社会保障の規模の増大が国の財政を圧迫している」という言葉、聞いたことがあるのではないでしょうか。
理学療法士が主に働く、医療・介護保険分野は社会保障費が大きく影響します。社会保障が十分に財源の見込める中で充実することができれば、社会保障の分野で働く方々にも多くのお金を支給することができるでしょう。
しかし、社会保障費の財政事情は以下のように非常に厳しい状況にあります。
社会保障費の収入源である社会保険料の税収は少なく、足りない部分は公債(借金)で賄っています。上記のデータは若干古いですが、以下のように社会保障費は増加する見通しが立てられています。
さらに、社会保険料収入の部分を担う働く世代。労働力人口の見通しは以下のように低下することが予想されています。
以上の情報から想定されるのは、社会保険料の収入に比べて社会保障の支出がどんどん増大していく未来です。
支出がどんどん増加する中で、社会保障の領域で働いている方々の賃金を上げる余裕は生まれやすいと考えられるでしょうか?
社会保障分野領域は金銭的に相当厳しい状況が見込まれると予想できます。
もちろん、厳しい状況でありながらも給与が増加傾向にある職種はありますが、再度以下のグラフを確認すると
理学療法士は医療職の中で給料上昇のトレンドには乗れていないことが分かります。ちなみに、近年の理学療法士の給料事情について詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。
つまり、社会情勢や職種全体としての傾向を踏まえると、理学療法士という職種全体の給料が上昇トレンドになりそうな要素は少なめであり、厳しそうという見立てがついてしまいます。
ただし、上記の年収の推移の記事を読んでいただくと分かりますが、理学療法士の給料が低下傾向にはなっておらず、長年ほとんど横ばいで給与水準を維持できているという点は良い面かもしれません。
理学療法士が生き残るために必要なこと
真っ先に考えるべきことは以下の2つです。
- あなたが生き残りたいのか?
- 理学療法士という職種を生き残らせたいのか?
上記の2つは分けて考えましょう。この記事を読んでいるあなたにとって重要なのはどちらでしょうか?
優先度の高さによって、取るべき行動は全く異なってきますので、以下に解説します。
あなたが生き残りたい場合
「理学療法士という職種の将来が不安というより、私の人生が不安だからどうにかしたい」という方は、理学療法士という職種にこだわりすぎなくても良いでしょう。
人生のゴールまでを考えた時、本当に理学療法士である必要がどうかを考えてみましょう。
あなた自身が人生の最期を迎える時に必要なことは何かを突き詰めて考えた時、理学療法士である必要が無いのなら、もっと自由な発想を持って生き残り戦略を考える方が良いでしょう。
たとえば、理学療法士という資格を活かして別の資格を取り、仕事を変えてしまっても良いのです。もしくは、理学療法士という資格を活かして副業をしても良いです。
さらに具体的に、個人の生き残り戦略として「マクロの視点」で考えてみましょう。
マクロ視点での理学療法士の生き残り戦略
マクロの視点では、理学療法士という職種の将来性は高いと言えないことを解説してきましたが、将来性の高い職種はあるのか?という点で考えてみます。
理学療法士の資格が資格取得に活きつつ、将来的に需要の伸びることが予想される職種を以下に3つ挙げてみました。
- 看護師
- 介護福祉士
- ケアマネジャー
仕事の内容がどうとか、世間体などの話は置いておいて下さい。ここでは「マクロの視点」で需要が伸びることが予想できる職種を挙げてみました。
看護師は、厚生労働省の看護職員需供分科会から「看護職員が不足する可能性」が話題に上がっています。つまり、需要が高まるのです。理学療法士とは真逆の話題ですね。
そして、看護師が不足することを見越して、政府は看護師の「養成促進」「復職支援」「離職防止・定着促進」に取り組む姿勢を見せています。
「離職防止」対策の1つとして「看護職員等処遇改善評価料」が2022年に新設され、給料アップが約束されたのです。詳しく知りたい方は以下の記事で紹介している加算に目を通してみてください。
次に、介護士に目を向けてみましょう。こちらも上記の記事にて加算を確認すると分かりますが、看護師と同様に介護士は将来的に不足することが予想されています。
介護士不足の対策として「介護職等ベースアップ加算」が2022年に新設されました。
上記の2つの職種と比較してケアマネジャーは金銭的に不遇の立ち位置にいますが、有効求人倍率が上がり続けており、受験者数と合格者数の少ないケアマネジャーの需要は高まりつつあります。
このように、将来的に需要増が見込まれる職種へ仕事を変えてしまうことも「マクロの視点」からすれば十分に効果的でしょう。
なぜなら「その職種の資格を持っているだけで需要が高まる」状態になるので、仕事を失うリスクが減少し、供給不足で引く手数多の職種であれば給料upの可能性が高まるからです。実際、ベースアップ加算などで給料の上昇が見込まれていますね。
何度も言いますが需要以外については言及していませんのであしからず。
本章のような視点で見極めれば、需要のある業界へ乗り移って生き残ることもできるでしょう。
ミクロ視点での理学療法士の生き残り戦略
本記事の序盤で「理学療法士個人の将来性ポテンシャルは高い」という内容を解説しました。
勉強熱心な性質を持つ理学療法士は起業に向いていると考えられます。
起業に関しては、正確なデータを出すことは難しいため、このブログを書いている筆者の体験談を軽く解説させていただきます。
筆者は、起業といっても小さく個人事業としてwebライターを行なっています(本業もあるので副業という形です)。
誰かに習った訳ではなく、自分自身で本を読み、色んな方の情報を集めながら勉強し、webライター事業に取り組みました。
webライターを始めた当初は、1文字0.5円という単価で働き、時給にして500円を切っていました。
しかし、webライター歴1年半を超えた今では、1文字5.0円という単価で働くことができています。時給にして2000円はゆうに超えています。つまり、それだけのニーズのある仕事ができていると言えるでしょう。
上記のように起業には、雇用される働き方のような「決まった時給」が設定されないため、収益の上限が青天井というメリットがあります。
(もちろん、どれだけ働いても稼げないというリスクも伴います。)
ちなみに、筆者は理学療法士という資格を活かしながら個人名でwebライターの仕事を行なっています。
このように「ミクロな視点」を持って理学療法士を活かすことができれば、個人としての需要を拡大できる可能性が十分にあるのです。
理学療法士という職種を生き残らせたい場合
「私が生き残りたいのではなく、理学療法士という職種をもっと発展させたい」という意志のある方は、本記事で解説してきたような「マクロの視点」を持ち、それを解決する姿勢を持って臨む必要があるでしょう。
理学療法士の将来性を高めるためには以下のような問題を解消する視点が必要になるのではないでしょうか。
- 理学療法士が供給過多になるという問題
- 理学療法士の給料が上昇トレンドに無い問題
- 財源の問題
- 人口比率の問題
- 専門職化の問題
などなど、ピックアップすれば考えるべきことはもっとたくさんあるでしょう。
理学療法士という職種の将来性・需要を高めたいのであれば、従来の専門職論のみでは解決できないような大きな視点を持って活動していく必要があります。
社会を巻き込んだ活動が重要になってくるでしょう。
理学療法士のわたしとして生き残りたい場合
「理学療法士という仕事は私にとって大切。将来性に不安はあるかもしれないけれど、理学療法士の私として生き残りたい。」と考えている方は「求められる理学療法士」として自身の理学療法士としてのポテンシャルを高めるのが良いでしょう。
いわゆる、一般的な理学療法士の生き残り戦略である「認定資格を取る」「専門資格を取る」などをして理学療法士の中での希少性を高めていく手法が有効です。
供給過多になることが予測される理学療法士の中で選ばれる存在になるためには、他の理学療法士とは違う優位性を持っていることが重要になるでしょう。
希少で優秀な理学療法士というポジションを取ることで、需要を高めることが可能になると考えられます。
まとめ
この記事では「理学療法士個人のポテンシャルの高さ」と「理学療法士という職種を取り巻く厳しい環境」について焦点を当てながら、理学療法士の将来性について解説しました。
筆者個人としては、理学療法士が生き残るためには「ミクロ視点」で「理学療法士個人のポテンシャルの高さ」を活かす道を考えるのが最も良いと考えています。
その理由としては、理学療法士全体を良くすることを考えた時、社会情勢など大きすぎる要素が絡んできてしまい、変化を起こすのが非常に難しいと予想されるからです。
ただし、理学療法士のポテンシャルを活かして上手く生き残るためには、ただ勉強をして資格を取れば良いということでもありません。
増税と物価高騰が相次ぎ、日本国民の生活が大変になっていく中、大切なのは「自分の顧客」を考えて行動することです。
「職種の顧客」と「自分の顧客」では、また考えるべきことが変わってきます。「ミクロ」「マクロ」両方の視点を持って、将来を考えると良いでしょう。
理学療法士の将来性は「ある」「ない」で単純に語れません。広い視野を持って行動していきましょう。
参考文献・サイト
参考1:“成功”とは何か? ゲイツ、バフェット、オバマなど12人の伝説的人物の定義
参考2:お金に関する名言 | 成功者からお金の本質や大切さを学ぶ
参考3:平成28年社会生活基本調査の結果
参考4:社会人の平均勉強時間は6分【仕事ができる人の時間管理術を公開】
参考5:理学療法士・作業療法士需給分科会
参考6:財務省 社会保障について②
参考7:厚生労働省 我が国の人口について
参考10:厚生労働省老健局振興課 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方
参考11:年金や医療関係の給付と財政の関係
参考12:第28回社会保障審議会 今後の社会保障改革について-2040年を見据えて-
参考14:厚生労働省 看護職員確保対策